週末オススメ本「人質の朗読会」
illustrated byNo354 ミヤノ ユリ
こんにちは。マイピク案内人のノリゴエです。
長い正月休みが終わった、と思ったらな~んと明日からまた3連休!!
今年は、カレンダーがよくて、3連休大放出な1年なんだそうです。
これで日本の景気も少しは上向くかしら?
私は、正月休みに散財したので、この連休は、
お家でハッピーDVD鑑賞タイムです
「アフタースクール」と「Little DJ~小さな恋の物語~」。
楽しみー。
さてさて、本題です!3連休前に、週末オススメ本を1冊ご紹介します。
今日は、この1冊です。
「人質の朗読会」小川洋子著。
事件に巻き込まれた人質たちが、自分の過去の体験を紙に書きおこし、
それを読み上げていくお話。
さぁ、みどころいってみよー。
ズバリ、癒されます。
人質たちは、み~~んなどこにでもいそうな、いわば、普通の人々。
人質たちが語る物語も、本当に淡々としたものです。
この世界に生きている、多くの人がスーパーマンじゃありません。
大きな注目を浴びることもなく、生きていきます。
小川洋子さんの小説は、そんな何ともない普通の普通の出来事の中から、
キラっと輝くものを切り取って見せてくれます。
私は、子供の頃、「大人ってつまらなそうだ」と思っていました。
結婚して子供の世話するのも、
毎日同じ格好して、同じ会社に行くのも、
すごく退屈そうに思えました。
今でこそ、大人の楽しみも分かってきましたが、
でも、やっぱり心のどこかでは、子供のままで、
時々、大人の淡々と繰り返される日々に、うんざりしそうになります。
「こんなはずじゃなかった」「この先ずっとこのままでいいのか」
みたいな悶々とした、誰でも感じうる、鬱陶しい悩みの傷口を、
この本の言葉たちが、ものすごく優しく包み込んでくれます。
読み終えると、
「あぁ、いいのか。このままで。普通の日常にもいっぱい素敵なことがあるのか」
と、じんわりと自分の人生全部を肯定させてくれるのです。
最後に懐かしく思うのは、さりげない日常だ。
この本の人質たちは、全員亡くなってしまうのですが、
最期に振り返る、心に深く残る思い出が、
本当にさりげない日常であることに、共感を覚えました。
私は、過去に何度か引越しをしましたが、
その土地を去る前に、最後に懐かしく思い出すのは、
自分が必死で努力して、手に入れた功績なんかじゃなくて、
楽しく笑って雑談した時の友達の笑った顔だったり、
船から一人で眺めた海の景色だったりしました。
その時は、何とも思わなかったのに、振り返ると輝くものがたくさんあるんですね。
「私だったら、どんな事を最期に語るだろう?」
未来に向かって生きる自分の毎日を、
逆に人生最期の方から眺め直すと、不思議と価値観のアングルが変わります。
小川洋子さんは、新人のとき、「小石を一個一個積み上げるように書いていく人だ」
と先輩から評されたそうですが、(参照)
この小説も、まさに、そんな感じです。
読み終わると、自分の人生の小石も一個一個丁寧に積み上げたくなる一冊です。
2013年1月11日